メイドさんたちがお勉強するののお手伝いをする事になって、ニコラさんたちはちょっぴりしょぼんってしちゃったんだよ。
でもまだお家の見学は終わって無いから、そのまんま次のお部屋に向かう事に。
「次のお部屋って、確か冒険者さんたちがお風呂の代わりに使ってるのとおんなじお部屋だってニコラさんたちが言ってたとこだよね?」
「うむ。じゃが、この館の風呂場を整えた以上、必要のない施設になってしまったからのぉ。かなりの広さがあったから、普通の部屋のように改装したのではないか?」
次のお部屋はね、ニコラさんたちが前にとまってた宿屋さんにあった、冒険者さんたちのお風呂だったんだ。
でもね、このお家にはちゃんとしたお風呂があるでしょ?
だからそんなお部屋はいらないだろうからって、ロルフさんは無くしちゃったんじゃないかなぁって言うんだ。
「そっか。じゃあ全然違うお部屋になってるのかも?」
そう言いながら、僕はそのお部屋のドアを開けたんだけど……。
「あれ? いろんなのが増えてるけど、あんまり変わってないよ」
手前っ側の板の間のとこに新しいおっきなテーブルが置いてあったり、ふちっこの方にお風呂場で使うちっちゃな腰掛とかが何個か置いてあるけど、お部屋自体は前と何にも変わってなかったんだよね。
だから僕とロルフさんは、なんで? って顔でストールさんを見たんだ。
そしたらストールさんは、せっかくあるのだからそのまま利用しようと考えたんだよって。
「この部屋ですが、わざわざ石畳に傾斜をつけ、その上溝や排水の設備まで整えてあったので、雨の日や冬場の寒い時期に使う洗濯の場として残す事に致しました」
お金持ちやお貴族様のお家でも、わざわざお家の中にお洗濯をするダメのお部屋なんて作る事、普通は無いんだって。
そりゃそうだよね、だってこんだけの大きさだったら普通のお部屋を一個作れるんだもん。
でもこのお家、あんまり人が住んでないでしょ?
だからお部屋はいっぱい余ってるし、ここみたいにお水を使っても大丈夫なように作ってあるお部屋なんて後で作ろうと思っても作れるもんじゃないから、ストールさんがこんな風に使おうって考えたんだってさ。
「そっか。ここだったら、雨が降っても濡れずにお洗濯ができるもんね」
「はい。今のように暑い季節だと洗濯物の量も多くなるので、このような施設があると私どもメイドからすると、とてもありがたいのです」
このお家って、ロルフさんちからメイドさんや執事さんたちがいっぱいお勉強しに来ることになってるでしょ?
それにニコラさんたちも住むことになるから、普通のお家なんかよりもすっごくいっぱいお洗濯ものが出るんだって。
そんな時にもし何日か雨の日が続いちゃうと、そのお洗濯ものがいっぱいたまっちゃうもん。
せっかくお洗濯に使えそうなお部屋があるんだから、そうならないように雨の日はここでお洗濯をしたらいいんじゃないかなぁってストールさんは考えたんだってさ。
「なるほどのぉ。じゃが、雨の日に洗濯をしても、乾かすのが大変なのではないか?」
「はい。ですからシーツなどの大物の洗濯は天気の良い日だけにして、雨の日は服などだけを洗った後、この部屋に干そうと思っております」
ストールさんはそう言うとね、壁の近くにトコトコって歩いてったんだよ。
そして壁の上の方を指さすと、そこには何かを引っかけるようなとこがあったんだ。
「なるほど。そこに干すためのひもを通すのじゃな」
「はい。あまり多くのものを干す事はできませんが、長雨の時などは重宝すると思いますわ」
ストールさんはそう言ってるけど、さっきも言った通りこのお家って人がいっぱいいるでしょ?
だったらさ、こんな狭いお部屋の中じゃすぐに洗濯物でいっぱいになっちゃうんじゃないかなぁ。
僕、何とかならなかなぁ? って頭をこてんって倒したんだよ。
そしたらさ、とってもいい事を思いついたんだ。
「あっ、そっか! あれとおんなじようなののでっかいのがあればいいんだ」
僕、前に魔道オーブンを作ったでしょ?
その時に試しで、筒の中からあったかい風が出てくるものを作ったんだ。
そしたらさ、それを見たお母さんがこれは髪の毛を乾かす魔道具なんだねって勘違いしたんだよね。
「僕、あれで魔道ドライヤーを作ったけど、もっとおっきくすれば洗濯物を乾かす魔道具もできるかも!」
魔道ドライヤーを思い出して、僕はすっごく嬉しくなったんだよね。
そしたらさ、それに気が付いたロルフさんがどうしたの? って聞いてきたんだ。
「ルディーン君、何やら機嫌がとても良さそうじゃが、何かあったのかな?」
「あのね、僕んちで作った髪の毛を乾かす魔道具の事を思い出してたんだ」
僕はね、前に作った魔道ドライヤーの事を話したんだよ。
そしたらロルフさんじゃなくって、横で聞いてたバーリマンさんがそのお話に入ってきたんだ。
「ああ、魔道オーブンを作っている最中に思いついたという、温風の出る髪を乾かす魔道具の事ですわね」
「うん。あのね、あれってあっつい風で髪の毛をあっと言う間に乾かしちゃうでしょ? だから僕、洗濯物もあっつい風を使えばすぐに乾いちゃうんじゃないかなぁって思ったんだ」
濡れてるのを乾かすっていうのはどっちもおんなじだし、だったら洗濯ものだってあっつい風で乾くはずだもんね。
だから僕、洗濯物用のおっきな魔道ドライヤーを作ればいいんじゃないかなぁってバーリマンさんに言ったんだよ。
「なるほど。確かに温風を使えば乾くのは早くなるでしょうね」
「じゃがな、あの魔道具では、洗濯物を乾かすのはちと難しいと思うぞ」
でもね、そんなんじゃダメなんじゃないかなぁって言われちゃったんだ。
「え〜、なんで? 髪の毛が乾くんなら洗濯物だって乾くはずでしょ?」
「確かに風が当たっておるところは乾くじゃろうな」
「ええ。でも干してあるすべての洗濯物に温風を当てるのは無理でしょ? だから大きな魔道具を作ったとしても、魔力を多く消費するだけであまり効率は良くないと思うわよ」
あっ、そっか。
1枚や2枚だけだったらおっきなドライヤーで乾かせるだろうけど、お部屋の中にいっぱい干してあったらそれに全部風を当てる事なんてできるはずないもん。
それじゃあ、おっきなドライヤーを作ってもダメかも。
「う〜ん、いい考えだと思ったんだけどなぁ」
「確かに、乾かすための魔道具というのはあったら便利でしょうからね」
僕がダメかぁってしょんぼりしたら、バーリマンさんが頭をなでながらいい考えだったのにねって慰めてくれたんだよ。
でもね、それを聞いた僕は、もう一個、いい方法があるじゃないかって思い出したんだ。
「そうだ! ドライの魔法があるじゃないか」
ドライっていうのはね、濡れてるものを乾かしちゃう魔法なんだ。
だからこの魔法が使える魔法陣を描いて、それを使えば洗濯物を乾かすのなんて簡単だって考えたんだよね。
ところが、
「ドライというと、水分を抜く魔法じゃな。しかし、あれは洗濯物を乾かすのには向かぬぞ」
僕が言ったのが聞こえたのか、ロルフさんがドライはダメだよって。
「なんで? 前に煮た魔物の皮にかけたら、ベタベタだったのがいっぺんに乾いちゃったよ?」
「うむ。確かにドライをかければ乾くじゃろう。しかしな、ルディーン君。あれは単体にかける魔法なのじゃ」
あっ、そっか!
そう言えば前にお母さんから洗濯物を干すのに使えるねって言われて、僕も無理だよって言ったっけ。
だってさ、ドライを使うのにいる魔力はそんなに多くないけど、何度も使ったらいっぱい使わなくっちゃ駄目だもん。
「ドライの魔法陣で作った魔道具で乾かしたら、すっごく魔道リキッドがいるね」
「うむ。実用的ではないじゃろうな」
お金がいっぱいかかるんだったら、そんなのだれも使わないもんね。
って事で、ドライの魔法陣を使って魔道具を作るっていうのはやめる事にしたんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
この先の展開、書かなくても解りそうな話ですが試作品を作るところまでやろうと思うとまず間違いなく1本分の分量になるので今回はここまで。